同人誌の感想を送ってよかった話

これは読んだ人に何らかのことを訴えたくて書いたブログではない。


ただただ大好きな同人誌の感想を送ってよかった!ハッピー!!という気持ちを持て余したために、文章に認めただけの「誰か私のハッピーな話を聞いてくれ!」というブログである。




私は文章を書くのが好きな字書きだ。




それは二次創作だけの話ではなく、とにかく持て余した気持ちは文章にしないと気が済まない。


このブログもそういう類のものだが、それ故に感想を書くのも大好きだ。


特に好きな作家には字書き絵描き関係なく、マシュマロの文字数に収まりきらない、一瞬引かれるほどの長文感想を送ってしまう。


今のところ全て喜んでいただけている(ような気がする)ので、完全に引かれてはいないと思いたい。




私には大好きな同人作家がいる。


私の神だ。


私は神のジャンルではほとんど活動していない。


CPに至っては完全読み専状態、地方住みのため同人誌は全て通販である。

(何故書かないのかというと、公式の二人の関係性が良すぎてそれ以上を自分で書けない)


ただそのジャンルはずっと好きで、神の漫画は初めて同人誌販売店の店頭で手にしたときから全て通販で購入してきた。




神の同人誌には奥付に感想フォームへ繋がるQRコードがある。


感想フォームに文字数制限はない。


送る感想はひとことでもいいし、ひとことでなくてもいい。


個別での返信はないが、感想を読んだことは呟いてくださる。


気持ちを伝えるのは好きだが、作者の負担になるような感想は送りたくない私にとってはありがたい。


感想をお伝えして大好きな作家の方の力になれば嬉しいし、次の創作への力に繋がればもっと嬉しい。


だが強要にはなりたくない。


ただ私がその本に感動して、その本が好きだということだけを伝えたい。


感想の返信や、次を描くか描かないかは作者のご意志だ。

(そういう感想フォームがない場合、基本はいつも返信不要の免罪符を最後尾につけて感想を送りつける。壁打ちに近い)




私は神の出した本の全てが好きだ。


まず絵柄が最高に好きだし、

二人がかっこよくて可愛くて、

神の解釈で描かれる二人の関係性が

優しくて温かくて、

透き通った波が浜辺に打ち寄せるように

静かに穏やかに私の心に染み渡っていく。


まじのまじで毎度最高なので、感想フォームの存在に気付いた一年ほど前から何度か長文感想を過去の本まで遡って送ったりなどしている。




そんな全てが大好きな神の出した本の中でも、特に胸に刺さって大好きな本があった。


それは神の解釈で、二人の間での特別が日常になっていく過程が丁寧に丁寧に描かれていた。


神の描く二人の日常は些細な部分まで丁寧で、推しCPが生きているその瞬間瞬間の描き方がもう言葉で言い表せないほど素晴らしいのだ。




とにかく、私は神のその本が大好きで大好きで仕方なかった。


もちろん感想フォームには匿名長文で昂る気持ちを送っている(というか一番最初に送った感想がその本)。


しかし最早それだけでは到底気持ちが収まらない。二年前に出された本だというのに、未だ私はその本への気持ちを持て余していた。




私はトレペ感想に手を出した。


本文にトレーシングペーパーを重ねて感想を書き込むという、例のアレだ。


ここが最高、ここのこういう部分がよかった、ここの描写が本当に丁寧で。


そういった感想を、1ページ1ページ、11枚書き込んでいった。


それを書いている間、神の描く二人の関係性のあまりの尊さに気持ちが昂って、涙してしまうこともあったが、最後まで書き切った。


最後に表紙のトレペに思いの丈も一緒に綴ったら「改行のない手紙?」みたいな文量になった。


想いが強すぎて自分でもちょっと引いた。


気持ちが昇華されていく、というよりは更に煮詰まってしまった感じはした。


ただスッキリはした。


全てを書き上げたそのトレーシングペーパーの束を見た。


これをどうしよう。




書き始めた理由が己の気持ちの昇華なのだから、書き上げたそれを私が持っていても何の問題もない。


だが、見えない感想はないのと同じだ。


神は感想フォームを置いていて、ツイートを見る限り感想はいつも喜んでくれている。


イベントで渡されるお手紙なども喜んでいらっしゃるようだ。


ならば、もしかしたら、これも喜んでもらえるのではないか?




二年前の本だ。


だが私が数年前の本の感想をお送りした際にも、神は喜んでくださっていた。


いや、でも怖いかも……知らない人からこの熱量は……





そんなトレーシングペーパーの束を、ひとまずファイルに挟んで封筒に入れた。


住所などは知らないし、仲良くもない。


ただの読み専の身で、住所を教えてほしいと願うほど厚顔でもない。


つまり、これを渡すにはイベントに行くしかない。


いや、でもやっぱ会場でこれ渡されるの怖いよな……


え、怖……ってなられたら流石に申し訳ない。


私が葛藤していたとき、奇しくも神は1週間後のイベントに出るために原稿に追われていた。




私は感想フォームを開いた。


神の感想フォームはブクマしているため、いつでも開ける。


大好きな本の感想を、再び書き綴った。


その本に対してはいくらでも言葉が出てくるのだから不思議だ。


そして、トレペ感想を書いてしまった旨を、少し冗談めかしてお伝えした。


神も(おそらく)地方のため、1週間後のイベントに本当に出られるのかはまだわからない。


ご負担にはなりたくなかったし、怖がられたら申し訳ない。そのときは私の感情の記録として保管しておこう。




そしてイベントの前々日。


神が脱稿した。


イベントで新刊が出る。


更に神は原稿中の感想に励まされた、と呟いてくれた。





決めた。イベントに行こう。





秒で交通手段を調べた。


フットワークが軽いのが私の長所だ。


直前の飛行機は高すぎた。


時間は溶けるが新幹線の方がマシだ。


新幹線で向かうなら前日入りしなければ開場に間に合わない。


翌日の新幹線とホテルを予約した。


サークルチェックをする暇はなかったし、その余裕もない。


神に会える。


神は神なので、イベントは当たり前にシャッター前配置だった。


おそらく話す暇などはないだろう。


新幹線に揺られる時間、トレペ感想を入れた封筒(B5サイズ)をどれだけご迷惑にならないくらいスムーズに、気持ち悪いと思われないように爽やかに渡せるかのイメージトレーニングを行った。




当日、マスクの下までしっかりとメイクして、ちゃんとして見える服に着替えて、イメージトレーニングを繰り返す。



「新刊一冊ください。ずっとあなたの描く二人が大好きです。これ感想です」



さっと渡して、ご迷惑にならないようにさっと去る。


ばっちりだ。


イメージトレーニングに集中していたら電車を間違えた。


なんで羽田空港まで止まらないのか。


それでもなんとか開場の30分前には会場についた。




一般参加は2回目だが、覚悟したほどに待機列は長くない。


やはり昨今の事情もあり遠征してくる人がそれほど多くないためだろう。


しかし神の同人誌には会場限定のノベルティがついてくる。


絶対ほしい。


シャッター前までどれだけスムーズに進めるかが肝になる。




開場して待機列が進む。


入れた瞬間、早足でシャッター前を目指した。


早くも最後尾札を持った人を見かける。


神の最後尾はどこだ!?


神のスペースの前まで行くと、神の前にはまだほとんど人がいなかった。


何故!?わからない。


サークルチェックをしていないため、隣のサークルが何を売ってるのかもわからない。


とにかく今はチャンスだ。


私の前に一人いて、私の番が来ても後ろには人がいなかった。


新刊とノベルティはゲットした。


手が震える。


こんなに緊張したのは、推し俳優の握手会に初めて参加した時以来だ。




「あの、これ、あの本の感想で」




差し出した封筒(でかい)を見て、神は「あっ」という顔をした。




「もしかしてメッセージくださった方ですか?」




そうですそうですそうです。


動揺もあって振り子のように頷く。


迷惑かもしれないと思ったトレペ感想を、神は嬉しい、と言ってくれた。


今回の新刊に関する話も教えてくれた。


偶然だけれど、今回の新刊とその本でリンクする部分があると。


泣きそうになった。


いや半分泣いてた。


本当に大好きで……いつも大好きで……と震える声で伝えることしかできない。


なんてこった。


イメージトレーニングした短い言葉しか出てこない。


辛い。全然爽やかでもなくて詰んだ。




感想をお渡しして、大好きだと伝えて、思ったよりもずっとちゃんとお伝えする時間があって、新刊に関するお話も教えてもらえて、私は頭を下げてその場を後にした。


離れた場所に来て、震える手で涙を拭った。


感動した。


神に好きな気持ちが届いていて、嬉しいと思ってくださって、こうして声をかけてくださったことに感動した。





満足しすぎて、もうそのまま帰ろうかと思った。


片手弱の遠征費を使ったが、神に会えて、直接新刊を買うことができて、感想を伝えられただけで胸がいっぱいだった。





でもそれも寂しいので、サークルチェックをしていないまま島を回って2冊本を買って、30分で会場を出た。





手に入れた本は多くないが、満足感は物凄かった。


胸がハッピーで満ちていた。




ちなみに買った本は全て最高だったので感想を送った。




神の新刊も本当に死ぬほど最高だった。


私の足りぬ語彙などでは到底言い表せない。


買った時点でハッピーだったのに更に幸せになってしまった。


神に感謝、世界に幸あれ。





好きを伝えるのはエネルギーがいる。


でもそれ以上に相手に好きが伝わるのが嬉しい。


私はあなたの本がとても好きです。


それだけでも伝わればいい。





私はこれからも感想を書く。